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絵、文章、脚本など複数の要素が混合して生まれる優れた総合エンタメ「漫画」。
表現技術は日々進化しており、今や漫画にできないものはないと言えるほどです。
これはもちろん「音楽」も例外ではありません。
無音の表現ジャンルでどのように音楽を表現していくのか。
本記事では表現の限界をうち破り、素晴らしいストーリーと発見を届けてくれる厳選の音楽マンガをご紹介します。
クラシックピアノを題材にした音楽マンガ7選

ピアノは西洋音楽の長い歴史の一つの到達点とも言える楽器。
クラシックはもちろんのこと、ジャズやロックなどジャンルを超えて楽曲の中心的な役割を果たすことの多い楽器です。
ここではクラシックジャンルのピアノを題材にしたおすすめ漫画を紹介していきます。
左手のための二重奏
タイトル | 左手のための二重奏 |
作者 | 松岡健太 |
出版社 | 講談社 |
レーベル | 少年マガジンエッジコミックス |
巻数 | 既刊8巻(2023年8月1日時点) |
あらすじ
暗い日々を送る不良少年のシュウは、天才ピアニスト・灯との出会いで変わっていく。だがその直後に灯を事故で亡くしてしまい、シュウは生きる希望を失う。後を追おうとした時、シュウを助けたのは左手に宿った灯だった…!シュウは灯と共に生きることを決意し、ピアニストの道を歩き出す!!
少年マガジンエッジ公式サイト | 左手のための二重奏
この作品の見どころ
『左手のための二重奏』をひとことで言い表すなら、ピアノ × 熱血少年マンガ。
亡くなった天才女子ピアニストの霊が左手に宿るという設定の斬新さとは真逆に、話の展開はむしろ少年マンガの王道的です。
15年のピアノ人生の上に築かれた天才的な左手と、これまでピアノに触れることすらなかった右手。
2つの手から紡ぎ出される音楽が描くのは、音楽的な何かというよりもむしろ情熱のカタルシスです。
灯の父を師としてピアノの練習をはじめ、また新たな技をもとめて世捨て人同然となっている伝説のピアニスト(しかも師の兄弟子)に会いにいくという筋書きも、まさに少年マンガ的です。
それでもつい引き込まれてしまうのは、主人公・シュウの一本気で愚直な性格と、霊となってもなおシュウを温かく見守り続ける灯のキャラクターゆえでしょう。
作品は漫画を音楽的に見せることよりも、音楽に向かう演奏家たちの心情を描くことに情熱を捧げられているので、音楽経験のない人でもきっと入りやすいはずです。
のだめカンタービレ
タイトル | のだめカンタービレ |
作者 | 二ノ宮知子 |
出版社 | 講談社 |
レーベル | Kissコミックス |
巻数 | 本編23巻+番外編2巻(完結) |
あらすじ
ピアノ科に在籍しながらも指揮者を目指すエリート音大学生・千秋真一は、胴体着陸の恐怖体験による重度の飛行機恐怖症に加えて海で溺れたことのトラウマのため船にも乗れないことから、クラシック音楽の本場であるヨーロッパに行くことが出来ず、将来に行き詰まりを感じて思い悩む日々を送っていた。
ある日、千秋は酔っ払って自宅の前で眠ってしまう。目が覚めると周囲にはゴミの山と悪臭、そして美しいピアノソナタを奏でる女性がいた。
Wikipediaより
作品のおすすめポイント
才能の片鱗を垣間見せながらも変人すぎて放置されていたピアノ学生・のだめ(野田恵)と、幼少期から類まれなる才能を見せながらもトラウマで飛行機に乗れずに、国内でくすぶりつづける指揮者志望のエリート音大生・千秋真一。
自宅マンションが隣室だったことをきっかけに、一見対照的な二人の音楽人生が交錯し始めます。
汚部屋暮らしで言動もおかしいのだめのキュートさと、のだめに言い寄られても冷徹に突き放すプライドが高く音楽至上主義者な千秋のかけあいはまるで夫婦漫才のよう。
(のだめは始終ぶっとばされて「ぎゃぼー」と言っている)
そして二人のまわりにはどういうわけか、個性的な面々がぞろぞろ集結しはじめます。
演奏力の微妙さと裏腹な熱い魂を持つヴァイオリニスト・峰龍太郎に、乙女のハートを持ちながらもアフロに髭の出立ちでティンパニを打ち鳴らすますみちゃん。
そして「巨匠」と呼ばれるほどの世界的な指揮者にも関わらず、素顔はただのスケベな老人である、ミルヒー・ホルスタインことシュトレーゼマンなど。
そんな彼らが1ページに1回は何かをしでかし続けるので、読んでいて笑いが止まりません。
そして彼らとのドタバタを繰り広げつつも、シュトレーゼマンとの出会いをきっかけにして、千秋の存在は学内を飛び越えて多くの音楽関係者に知られ始めることに。
また千秋に刺激されるかのように、のだめの音楽への向き合い方も変化し始めます。
物語は大きく舞台を移す中盤あたりから、ややシリアスな雰囲気へと作風が変化しきますが、それも世界中からトップクラスの才能が集まるクラシック音楽の厳しさを描いているからこそ。
そんな圧倒的な世界に足を踏み入れるなかで、のだめの持つ潜在的な音楽的才能が開花するときはくるのか?
またのだめと千秋の恋のゆくえからも目が離せません。
『のだめカンタービレ』は全23巻の音楽マンガを代表する名作。
ぜひこの機会に楽しんでみてください!
▼漫画賞の受賞歴
- 2004年 第28回講談社漫画賞少女部門受賞
ピアノの森
タイトル | ピアノの森 |
作者 | 一色まこと |
出版社 | 講談社 |
レーベル | アッパーズKC、モーニングKC |
巻数 | 全26巻(完結) |
あらすじ
主人公の一之瀬海(カイ)は、「森の端」に捨てられたピアノをおもちゃ代わりにして育ってきた。
ある日、カイが通う小学校に転校生として、世界的なピアニストの父親をもつ雨宮修平がやってくる。
雨宮は、カイが森でピアノを弾いているところを見て驚き、そのことを小学校の音楽教師であった阿字野壮介に伝える。
かつて天才ピアニストであった阿字野はカイの才能に気付き、弟子として迎える。
ピアノの森 – Wikipedia
四月は君の嘘
タイトル | 四月は君の嘘 |
作者 | 新川直司 |
出版社 | 講談社 |
レーベル | 講談社コミックス |
巻数 | 全11巻(完結) |
あらすじ
かつて指導者であった母から厳しい指導を受け、正確無比な演奏で数々のピアノコンクールで優勝し、「ヒューマンメトロノーム」とも揶揄された神童有馬公生は、母の死をきっかけに、ピアノの音が聞こえなくなり、コンクールからも遠ざかってしまう。
それから3年後の4月。
14歳になった公生は幼なじみの澤部椿を通じ、満開の桜の下で同い年のヴァイオリニスト・宮園かをりと知り合う。
ヴァイオリンコンクールでかをりの圧倒的かつ個性的な演奏を聞き、母の死以来、モノトーンに見えていた公生の世界がカラフルに色付き始める。
四月は君の嘘 – Wikipedia
作品のおすすめポイント
音楽を失ったかつての天才少年ピアニストが、ある少女ヴァイオリニストとの出会いをきっかけに、自身の音楽を取り戻していく様を描いた『四月は君の嘘』。
本作品を読んでまず心を奪われるのが、少女マンガ的な恋愛感情を伴った繊細な人間関係と少年マンガ的な迫力ある演奏描写です。
それぞれの人生が絡み合った複雑な人間関係が丁寧に描かれており、またそれぞれの背景や動機付けがしっかりと描かれているので、キャラクターの吸引力が素晴らしいのがこの作品の魅力です。
思春期の少年少女たちの心情が詩的かつエモーショナルに演出されているので、彼らに引っ張られるようにあっという間に最終巻まで読み進めてしまうでしょう。
また演奏シーンでの静と動のコントラストも美しく、演奏時の体の使い方などは、スポーツ漫画を得意とする作者の描写力がここぞとばかり発揮されていて見惚れてしまうほど。
些細なエピソードが伏線やメタファーになっているなどシナリオや演出がかなり精緻なので、複数回読み返すことでさらに楽しめる作品だと思います。
またこの作品では全11巻の中で恋愛感情や音楽家としての物語のステージがどんどん移り変わっていくのも見どころの一つ。
物語のはじまりでは、主人公の有馬公正は母親のスパルタ教育の呪いに苛まれる元音楽家にすぎませんが、そこから何に出会いどう脱却しどのように成長していくのかに注目して読んでいただきたい作品です。
そして最終話にたどり着いたとき、『四月は君の嘘』というタイトルに、さまざまな思いが去来するはずです。
グールドを聴きながら
タイトル | グールドを聴きながら |
作者 | 吉野朔実 |
出版社 | 小学館 |
レーベル | PFコミックス |
巻数 | 全1巻(完結) |
あらすじ
真央子が高校生活の一番はじめに知り合った立花(りっか)は、とびきりの美少女。
一方的な思いなのだと、どこかで知りながら、彼女の一挙手一投足に目を奪われ、彼女のことばに心揺らぐのを止められない――。
グールドを聴きながら | 小学館
作品のおすすめポイント
本作は5つの作品を収めた短編集で、その中の最初の作品が同名の『グールドを聴きながら』。
バッハ曲の演奏で有名なカナダの天才ピアニスト、グレン・グールドをモチーフにした短編です。
物語の構図は現実離れした同性の友人に対して一方的な想いを募らせつつも、明かされない秘密に引っ掛かりを覚える主人公という少女マンガの定番ともいえるもの。
しかし本作は主人公・真央子の立花に対する心の動きを描きつつも、どこか淡々と抑制されているのが印象的です。
美貌ゆえに魔性としての存在を体現していく立花と、緊張感と清廉さが印象的なグールドの音楽性がコントラストとして際立っています。
グレン・グールドを知っているとより作品の雰囲気に踏み込めるかと思いますので、未聴の方はあわせて聴いてみるのもおすすめです。
(おそらく終わり方も『ゴルトベルク変奏曲』のアリアに始まりアリアに終わると楽曲構成に引っ掛けているはず)
収録されているその他の4本もとても雰囲気のある作品なので、ぜひこちらも作品世界に浸ってみてください。
神童
タイトル | 神童 |
作者 | さそうあきら |
出版社 | 双葉社 |
レーベル | アクション・コミックス |
巻数 | 全4巻(完結) |
あらすじ
浪人生・菊名和音は栄光音楽大学を目指しているものの、「合格は無理」と言われていた。
そんなある夜、ボートを漕いでいた和音は野球ボールを捜しにきた少女・成瀬うたと知り合う。
和音は勢いでうたに部屋に上がり込まれるが、彼女は和音のピアノから聴いたことも無いような素晴らしい音色を奏でる。
神童 (漫画) – Wikipedia
いつもポケットにショパン
タイトル | いつもポケットにショパン |
作者 | くらもちふさこ |
出版社 | 集英社 |
レーベル | マーガレットコミックス |
巻数 | 全4巻(完結) |
あらすじ
幼馴染の須江麻子と緒方季晋は同じピアノ教室に通い、遊ぶ時も一緒という仲。
そんなある日、季晋が中学進学と同時にドイツへ留学し、さらに当地で列車事故に遭遇したため音信不通となる。
やがて時が経ち高校生となった麻子は、季晋がすでに日本に帰国していることを知る。
再会を喜ぶ麻子だが、季晋は彼女を特別にライバル視して余所余所しく扱う。
その変容の背景には共にピアニストであり、友人であり恋敵であった二人の母親の因縁が関わっていることが明らかとなる。
いつもポケットにショパン – Wikipedia
作品のおすすめポイント
『いつもポケットにショパン』はくらもちふさこ先生の名作マンガ。
幼馴染の2人がピアノに取り組む中で関係性を回復していく様が描かれます。
この作品で特徴的なのは演奏シーンで音符や擬音、効果音を使っていないこと。
コマに描かれる登場人物の表情や腕や手先、姿勢などで音楽を表現しており、当時にしてもかなりチャレンジングな表現方法だったようです。
かなり昔の作品なのでいわゆる昭和の少女漫画的な空気感はありますが、名作なのでぜひ読んでいただきたい作品です。
ピアノのムシ
タイトル | ピアノのムシ |
作者 | 荒川三喜夫 |
出版社 | 芳文社 |
レーベル | 芳文社コミックス |
巻数 | 全13巻(完結) |
あらすじ
主人公の蛭田敦士(ひるたあつし)は巽ピアノ調律所に勤める天才的なピアノ調律師。
口が悪く性格にも難があるが、ひとたび彼が調律するとどんなピアノも美しい音色を取り戻す。
彼はいったい何者なのか………?
作品のおすすめポイント
ピアニストを題材とした漫画は数多くありますが、主人公がピアノ調律師という珍しい設定の漫画です。
皮肉屋で口は悪いが専門家として超一流の技術を持つという設定は古くはブラックジャックや美味しんぼの山岡士郎を想起させますが、まさにその系譜。
作中でもピアノを分解してメンテナンスする様子が何度も描かれますが、内部構造の緻密さ複雑さは人体を彷彿とさせるものがあり、その辺りもブラックジャック的かもしれません。
ピアノは近代西洋音楽の到達点ともいえる楽器ですが、フィクションの題材としては演奏を軸に取り上げられることが圧倒的多数。
しかし工業製品的としてもある種の完成の域にあるわけで、1台のピアノの裏には職人たちの技術の物語があります。
(ハンマー1つとっても構造は複雑でパーツの数も多い)
楽器に触れたことがある方はもちろん、これまで楽器演奏と縁遠かった方にもぜひ読んでいただきたい作品です。
オーケストラ・作曲家を題材にした音楽マンガ4選

弦楽器、管楽器、打楽器によって構成されるオーケストラ。
演奏される楽曲は交響曲などの多楽章、大規模編成の楽曲がメインで、多彩な音色と緻密なハーモニー、6オクターブもの音域で構築される圧倒的な表現力は聴く人を魅了して止みません。
表現に向き合う作曲家の苦悩から楽団員の人間物語まで、切り口の異なる漫画が多いのも魅力ですね。
青のオーケストラ
タイトル | 青のオーケストラ |
作者 | 阿久井真 |
出版社 | 小学館 |
レーベル | 裏サンデーコミックス |
巻数 | 既刊11巻(2023年8月1日時点) |
あらすじ
中学生・青野一はかつて世界的ヴァイオリニストの父親の手ほどきのもと、ヴァイオリンのコンクールで数々の成績を収めていた。
しかし父親の女性問題で家庭が崩壊しかけたことから、青野はヴァイオリンをやめてしまっていた。
そんな中、青野はふとした切っ掛けで秋音律子と出会い、彼女が独学でヴァイオリンを練習していることを知る。
律子と交流するうちに青野は彼女にヴァイオリンを教えることとなり、その中で自身も音楽の感動を取り戻し、再びヴァイオリンを弾き始める。
そしてその後、2人は進学先の高校でオーケストラ部に入るが、そこでかつてコンクールでトップだった佐伯直と再び出会い、ヴァイオリンの腕を競うことになる。
作品のおすすめポイント
『青のオーケストラ』は天才ヴァイオリニストの高校生・青野一と、彼の所属する強豪の高校オーケストラ部を描いた作品。
実在する千葉県立幕張総合高等学校シンフォニックオーケストラ部をモデルに描かれていることでも知られています。
やはり本作品が特徴的なのは「高校のオケ部」を舞台にした物語ということ。
吹奏楽などと比べると決して数の多くない高校管弦楽部が舞台となっており、音楽に真剣に挑む高校生たちの姿が迫力ある描写で描かれます。
(ちなみにモデルとなっている幕張総合高校も何度も全国コンクールで優勝している名門校です)
さまざまな部員が所属する中、同じ天才ヴァイオリン少年・佐伯真とのライバル関係や、秋根律子はじめとする女子たちとの恋愛関係、また先輩後輩との交流は高校生だからこそ。
音楽の厳しさと悦びを描きつつも、青春の瑞々しさが眩しいおすすめの作品です。
マエストロ
タイトル | マエストロ |
作者 | さそうあきら |
出版社 | 双葉社 |
レーベル | アクションコミックス |
巻数 | 全3巻(完結) |
あらすじ
スポンサーの倒産により解散に追い込まれた名門オーケストラ・中央交響楽団。
楽団員がその後の身の振り方を考える中、突如再結成の連絡が舞い込む。
1ヶ月後の再結成コンサートの企画のもと再び集結する元楽団員だったが、指揮者は無名の老人である天道徹三郎。
しかし一連の話に懐疑的な楽団員の迷いを吹き飛ばすかのように、天道は圧倒的な音楽力を見せつけ始める。
作品のおすすめポイント
『神童』『ミュジコフィリア』など、音楽を題材とした漫画を何作も描かれているさそうあきら先生の作品。
指揮者・天道徹三郎のもと、オーケストラがベートーベンの『運命』とシューベルトの『未完成交響曲』の演奏を完成させるまでを描いていきます。
この作品の魅力はクラシックや楽器に関する専門的で音楽的なエピソードを盛り込みつつも、それが楽団員それぞれのドラマに結びついていること。
登場人物の人間性と音楽が分かち難く結びついているからこそ、楽器や演奏についての繊細で緊張感のあるエピソードが真に迫るものとして感じられるのではないかと思います。
また大所帯ならではの人間関係のいざこざも非常にリアルですね。
圧倒的な音楽性を見せつける指揮者・天道徹三郎とは何者なのか?というミステリー要素もあり、個人的にとても楽しめた作品でした。
特にオーケストラや吹奏楽を経験された方は楽しめる箇所が多数出てくるかと思いますので、ぜひ読んでみてください。
ルードウィヒ・B
タイトル | ルードウィヒ・B |
作者 | 手塚治虫 |
出版社 | 手塚プロダクション |
レーベル | ー |
巻数 | 全2巻(未完) |
あらすじ
ウィーンの貴族・フランツ・クロイツシュタインは母親が突然のクジャクの鳴き声に驚いたことにより、早産で生まれる。母親が出産をきっかけに亡くなってしまったことで、フランツは父親から「ルードウィヒの名を持つ者を絶対に許すな」と教え込まれる。ルードウィヒとは母親を産気づかせたクジャクの名前だった。数年後、貴族の誇りなき者として父親から勘当されたフランツは、ドイツのボンで幼いルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンとに出会う。
作品のおすすめポイント
巨匠・手塚治虫先生によって描かれる音楽家・ベートーヴェンの一代記です。
史実に基づきながらも、フランツ・クロイツシュタインという架空の人物を物語に組み込むことで、これまでにないベートーヴェンの物語が描かれていきます。
手塚先生ご自身が音楽に造詣が深く、ピアノも堪能だったことに加え、当時の音楽家の立場や創作に向かうベートヴェンの精神性に漫画家としての自身を重ね合わせていたと見られ、非常に読みごたえのある作品になっています。
やはりこの作品の白眉はフランツ・クロイツシュタインという人物。
憎しみの感情に突き動かされ罪を犯しつつも完全な悪人ではないという、とても手塚漫画的なキャラクターで、貴族と平民という身分制や王政の崩壊という古典派後期からロマン派前期の背景を描くのに一役買っています。
またベートーヴェンが聴力を失うきっかけとなるのもフランツで、これは本作品の独自の設定となっています。
一つ残念なのは連載中に手塚先生が亡くなってしまったことにより、単行本としてわずか2巻で未完となってしまったこと。
物語の進行度としても、ピアノソナタ『月光』の原型を作曲した辺りで絶筆となっており、史実的には交響曲第1番を完成させた前後までしか描かれていません。
有名な交響曲第3番『英雄』や第5番『運命』が作中で描かれなかったのが残念でならない傑作です。
ミュジコフィリア
タイトル | ミュジコフィリア |
作者 | さそうあきら |
出版社 | 双葉社 |
レーベル | アクションコミックス |
巻数 | 全5巻(完結) |
あらすじ
京都芸術大学に入学した漆原朔は入学式の日にちを間違えて登校してしまう。そこで出会ったのは「現代音楽研究会」の面々だった。幼少期に作曲家の実父から「才能がない」と音楽から遠ざけられ、大学にも映像学科の学生として入学した朔だったが、むりやり演奏に参加させられたことをきっかけに、研究会の一員となる。
作品のおすすめポイント
『ミュジコフィリア』は音楽漫画に定評のある、さそうあきら先生の作品。
音楽の中でもスポットの当たりにくい現代音楽とそれに取り組む芸術大学の学生を描いた画期的な作品です。
ちなみに現代音楽とはクラシック音楽の延長線上にある、20世紀以降、現在進行形で進んでいる西洋音楽のこと。
めちゃくちゃざっくり乱暴に整理すると、バッハ→モーツァルト→ベートーヴェン→ワーグナー→ドビュッシー→シェーンベルク→ストラヴィンスキーと来て1945年前後くらいで、ここ辺りから以降の音楽を現代音楽と言います。
(解釈は諸説あります)
作中にもあるように、現代音楽への起点となったのはワーグナーのトリスタン和音。
これをきっかけに西洋音楽は次第に調性音楽からの脱却へと向かっていきますが、前提への懐疑が根底にあることから、そこから離脱するための実験的手法が積極的に取り入れられたのが大きな音楽的特徴です。
音楽的な習慣のもとに作られた聴感上の快不快を保留しているので、これまで聴いたことのないようなノイジーで不協和で複雑なリズムの楽曲からCMでも使われているような曲まで千差万別。
現代音楽に触れたことがない方にとっては作中で鳴らされている音をイメージしづらいという欠点はあるものの、作曲科の現在進行形が分かるという意味ではとても刺激的な作品だと思います。
また物語が進んでいくにつれ、現代音楽の枠を飛び越えて物語世界が広がっていきます。
「音楽とは何か?」「なぜ音楽に向かうのか?」という根源的な問いかけがなされており、ただ前衛の奇抜さを見せつけて終わるようなことはしない、芯のある作品だと感じます。
そのような深いテーマに向かいつつも、物語の舞台は常人離れした方の多い芸大。
音楽家独特の恋愛要素も多分にあり、単純に若者の群像劇として読んでも楽しめる作品です。
共感覚持ちだったりと音が自身と不可分な人たちの世界をぜひのぞいてみましょう。
超おすすめ!
吹奏楽を題材にした音楽漫画2選

管楽器と打楽器で構成される吹奏楽。
部活動でもおなじみということもあり、中高校生を主人公にした漫画が多いのも特徴です。
音楽への情熱と若さゆえのひたむきさが魅力の漫画をご紹介します。
みかづきマーチ
タイトル | みかづきマーチ |
作者 | 山田はまち |
出版社 | 双葉社 |
レーベル | アクションコミックス |
巻数 | 全6巻(完結) |
あらすじ
勉強漬けの日々で毎日が退屈だった高校1年生の美月は、春休みに家出をし、秋田で喫茶店を営む叔母・ユキを訪ねる。
口うるさい母親も勉強もない日々は最高なはずだったのに、やはりどこか退屈で……。
そんなある日、叔母の配達に付き添い地元の高校へ。
そこで美月は、音楽と動く隊列で作られるマーチングバンドに汗を流すアキラたちと出会う——。
みかづきマーチ | 双葉社
作品のおすすめポイント
『みかづきマーチ』はマーチングバンドを題材にした音楽漫画。
吹奏楽の演奏だけでなく、隊列と行進も加わることで目でも楽しめるのが大きな魅力です。
しかしそんな華やかさとは裏腹に、演奏する側にとっては音楽以外にも動きまで覚えなければならず、また全体とあわせなければならないなどかなり過酷な面も。
そんなマーチングバンドのエネルギーを落とし込んだかのごとく、この漫画はとにかく熱い!
多人数で編成された管楽器主体のバンドから放たれる音圧や音量、勢いといった音の全てをこれほどまでに再現してくれている漫画は他にないのではないでしょうか。
都会での勉強漬けの毎日から逃げ出してきた主人公の美月は、そんなマーチングバンドに取り組む高校生たちの熱い演奏を見て一瞬で心を奪われてしまいますが、そんな初期衝動の描かれ方も迫ってくるようなものがあります。
毒親のいいなりだった主人公の美月がどのように自己を確立していくのかという部分も見どころの漫画です。
青空エール
タイトル | 青空エール |
作者 | 河原和音 |
出版社 | 集英社 |
レーベル | マーガレットコミックス |
巻数 | 全19巻(完結) |
あらすじ
吹奏楽部の名門・白翔高校に入学し、トランペットを始める小野つばさ。夢は、幼時から憧れた普門館での演奏。彼女は、高級な部の只一人の初心者であり、その苦戦が続く中、勇むのは同級生の野球部員、山田大介。お互い夢に挑んで励まし合う二人は、或る約束を交わす。
青空エール – Wikipedia
作品のおすすめポイント
ネガティブになりがちですぐに足元を見てしまう主人公の小野つばさですが、クラスメイトの山田大介との交流のなかで少しずつ変化を見せていきます。
青春の甘酸っぱいラブストーリーものかと思いきや、部活の強豪校にありがちな人間関係や葛藤など、描かれる世界はなかなかリアル。
物語も高校入学から卒業までの3年間が舞台となっており、まるで登場人物たちと同じ高校生活を過ごしたかのような錯覚に陥ってしまうほどです。
挫折に苦しみながらも目標に向かって走り続ける若者たちの姿をぜひ見届けてください。
ジャズを題材にした音楽マンガ4選

即興演奏やメンバーや編成の入れ替わりなど、演奏の一回性に音楽を追求する「ジャズ」。
演奏者と客の距離も近く、ステージの熱を間近で感じやすいのもジャズならではと言えるでしょう。
ここではそんなジャズの魅力を描いたおすすめの漫画を紹介します。
スインギンドラゴンタイガーブギ
タイトル | スインギンドラゴンタイガーブギ |
作者 | 灰田高鴻 |
出版社 | 講談社 |
レーベル | モーニングKC |
巻数 | 全6巻(完結) |
あらすじ
第二次世界大戦戦直後の日本。主人公である於菟(おと)の姉は溺水事故により記憶障害を患い、残された唯一の記憶が戦中に聴いたジャズベーシストである小田島龍治が目の前で奏でたジャズの音であった。
1951年(昭和26年)の春、於菟は姉の希望を叶えるため、自宅にあったウッドベースを抱え小田島龍治を探す旅に出るのであった。
スインギンドラゴンタイガーブギ – Wikipedia
作品のおすすめポイント
『スインギンドラゴンタイガーブギ』の舞台は終戦直後の日本。
戦後の混沌期を舞台に、主人公・於菟(おと)の姉・依音子とジャズベーシスト・小田島龍治をめぐる因果が語られていきます。
冒頭からほのめかされる依音子と龍治のデカダンスで背徳的な関係、また昭和中期の田舎の封建的価値観の残る閉鎖性が要所で盛り込まれるなど、単なるジャズ漫画におさまらない文学的な匂いを感じる作品です。
しかし文学とは言いつつも、本作品は決して堅苦しい作品ではありません。
進駐軍相手にジャズを演奏するジャズメンたちの無頼な感じや、ジャズに取り憑かれた主人公・於菟のステージで歌い跳ねまわる躍動感なども楽しく描かれており、陽気な明るさと日陰者の湿り気の混じり合う日々を絶妙に見せてくれます。
また朝鮮戦争におもむく米兵や興行につきまとうヤクザものなど、これまであまりスポットが当たることのなかった要素が積極的に描かれているのもポイント。
しっかりとした読み応えを保ちつつも、モノクロームの漫画の世界で総天然色のような色彩の豊かさを見せてくれる傑作ジャズ漫画です。
▼漫画賞の受賞歴
2021年 第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門 新人賞
BLUE GIANT
タイトル | BLUE GIANT |
作者 | 石塚真一 |
出版社 | 小学館 |
レーベル | ビッグコミックス |
巻数 | 全10巻(完結) |
あらすじ
宮城県仙台市に住む高校生・宮本大は真っ直ぐな性格の持ち主だが、将来何をしたいのか分からず学生生活を送っていた。
ある日聴いたジャズの曲に興味を惹かれ、初めて訪れたライブハウスでジャズの演奏を目の当たりにしたことで、サックスプレーヤーを目指すことを決意。
サックス購入のためにアルバイトを始める。
BLUE GIANT – Wikipedia
作品のおすすめポイント
高校生・宮本大がサックスプレーヤーとしてジャズを志す『BLUE GIANT』。
その魅力は大の音楽に向ける情熱とひたすら描かれる泥臭さにあります。
大は初めてジャズの生演奏を聴いたときの激しい感動を頼りに、灼熱の真夏も雪が降り積もる大晦日も関係なくサックスの練習にあけくれますが、その姿はまさに手探り。
その練習や描写はひたすら泥臭く、音楽練習の基本である反復の地道さとプレーヤーがそこに込める集中力を、うまく描いています。
楽器一本で勝負するジャズのジャズらしさに触れられる作品です。
BLUE GIANT SUPREME
タイトル | BLUE GIANT SUPREME |
作者 | 石塚真一 |
出版社 | 小学館 |
レーベル | ビッグコミックススペシャル |
巻数 | 全11巻(完結) |
あらすじ
単身、ドイツ・ミュンヘンへ乗り込んだ大。宿泊・食事などの確保はできたものの、肝心の練習場所が見つからない。
片っ端からジャズバーを訪ねるが『アジア人のジャズは聞いたことが無い。』と断られるばかり。
想像以上の現実にコーヒーショップで途方に暮れていると、隣で読書をしていた地元の大学に通うクリスが声をかけてくる。
BLUE GIANT – Wikipedia
坂道のアポロン
タイトル | 坂道のアポロン |
作者 | 小玉ユキ |
出版社 | 小学館 |
レーベル | フラワーコミックスα |
巻数 | 全9巻+番外編1巻(完結) |
あらすじ
1966年、東京から佐世保に転校してきた高校生・西見薫は札付きの不良と恐れられる川淵千太郎と出会う。
神経質な秀才と腕っ節が強い不良という対照的な2人だったが、ジャズをきっかけに友情が芽生えていく。
作品のおすすめポイント
『坂道のアポロン』の魅力は何を差し置いてもまずは薫と千太郎の美しい青春の友情。
そこに千太郎の幼馴染の律子が加わることで、恋の物語が三角関係、四角関係的に複雑に絡みはじめます。
そして物語の美しさは彼らの関係が時間の流れとともに変化することにあります。
そして彼らの関わり方を描くものとして、ジャズが象徴的に使われているのが印象的です。
番外編である10巻『BONUS TRUCK』を読み終えたら一言「これは人生」と呟きたくなるはずです。
ロック/バンドを題材にした音楽マンガ8選

ロックと言えばギター、ギターと言えばバンド。
歪みを効かせたギターサウンドは2021年になっても変わらず支持され続けています。
ここではロックやバンドを題材にした音楽マンガの中からおすすめの作品を紹介します。
SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん

タイトル | SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん |
作者 | 長田悠幸・町田一八 |
出版社 | スクウェア・エニックス |
レーベル | ビッグガンガンコミックス |
巻数 | 既刊20巻(2023年8月1日時点) |
あらすじ
三菱学園高校で働く”ジミ”な英語教師・本田紫織は、実家の借金返済のため仕事に明け暮れる日々を送っていた。
ところが27歳の誕生日を迎えた日、突然ジミ・ヘンドリクスの亡霊に取り憑かれ「27歳が終わる日までに音楽で伝説を残さなければ死ぬ」と言い渡される。
紫織は三菱学園の生徒達と軽音部を立ち上げ、伝説の達成へ向けて音楽活動を始めることとなる。
SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん – Wikipedia
作品のおすすめポイント
まず本作品は発想の奇抜さが秀逸!
「ジミヘン」ことジミ・ヘンドリックスが(なぜか)現代に亡霊としてよみがえるという設定だけで面白すぎるし、登場シーンもかなり笑えるものがあります。
そして一見気をてらったように見える設定も、作品に込められた現代的なテーマを語るための要素として上手く組み込まれていて、素晴らしいのひとこと!
主人公の地味な女性の教師・紫織は、ただ憑依されてギターを弾くのではなく、本人にギターをジミヘンのように弾くべき理由があるのです。
また「ロックレジェンドは27歳までに死ぬ」というロック界の小ネタが設定に組み込まれているなど、好きな人はニヤッとしてしまう内容。
もちろんジミヘンを知っていればより作品のフィーリングに近づけるので、ジミヘンの演奏する姿を見たことがない方は、YouTubeを参考にしながら読むとさらに楽しめるかと思います。
また本作品は絵もばつぐんに上手いので、画力重視の方にも本作品はおすすめ。
ロックのダイナミズムを躍動感あふれる演奏シーンで描き切っていて、ギターを抱えてのポーズの取り方や構図が本当にスゴいと思います。
ギターショップ・ロージー
タイトル | ギターショップ・ロージー |
作者 | 高橋ツトム |
出版社 | 小学館 |
レーベル | ビッグコミックス |
巻数 | 既刊2巻(2023年8月1日時点) |
あらすじ
とある街の片隅にひっそりと佇むギターの修理工房『ギターショップ・ロージー』。
ロックをこよなく愛する兄弟、アンガスとマルコムによって営まれるその店には、さまざまな背景を持つギターが持ち込まれるのだった。
40年代に製造されたスティールギターから、80年代のジャパンビンテージまで、客の想いに応えるために、今日も二人は修理を進めていく。
作品のおすすめポイント
『ギターショップ・ロージー』は音楽マンガのなかでも非常に珍しい、ギターショップを舞台にした作品。
ロックバンド・AC/DCに心酔する2人の兄弟が、持ち込まれるワケありギターをロックな魂で修理するヒューマンドラマです。
金はないけど心意気はロックな兄・ヤンガスと、強面でちょっとぶっきらぼうだけど内心は客に寄り添う弟・マルコムのコンビが本当にいい味を出しています。
ギターへの愛とリスペクトが最優先で、どこか不器用な2人の姿は、今の世の中だからこそ味わい深く映ります。
1巻の最終エピソードでは新たなキャラクター・ヒカコも登場。
高橋ツトム先生の渋めの絵が世界観にピッタリの作品です。
BECK
タイトル | BECK |
作者 | ハロルド作石 |
出版社 | 講談社 |
レーベル | KCデラックス |
巻数 | 全34巻(完結) |
あらすじ
存在感がなく自分に自信が持てない中学2年生の主人公・田中幸雄は学校帰りに小学生にいじめられていた犬を助ける。
犬(ベック)の飼い主のバンドマン・南竜介と出会った幸雄は竜介からギターをもらったことで、音楽の世界にのめり込んでいく。
作品のおすすめポイント
バンド漫画の代表作ともいえるBECK。
普通であることに悩む少年が音楽に目覚めギターやバンドに没頭していく様子はバンド経験者であれば共感するところ。
また音楽を経験していなくても、何かに夢中になった十代の頃をきっと思い出すのではないでしょうか。
年上の気になる女子に見合う自分になりたいと背伸びする姿も青春という感じで胸に刺さります。
音楽的な背景ではちょうど90年代のオルタナ&ブリットポップシーンと重なった頃で、アイドル音楽の扱い方などが多少当時の音楽観を表していたりしますが、細かいことは気にしない。
個人的には当時の若手ミュージシャンではあまり使い手のいなかったギブソンSGをフィーチャーしたのが目新しかったです。
NANA
タイトル | NANA |
作者 | 矢沢あい |
出版社 | 集英社 |
レーベル | りぼんマスコットコミックス |
巻数 | 既刊21巻(長期休載中) |
あらすじ
東京に住む彼氏と同居するため上京する小松奈々、ミュージシャンとして成功するため上京する大崎ナナ、出身地は異なるが同い年の2人のNANAは新幹線の中で出会った。
その後、ひょんなことから奈々とナナは同居することとなる。さらに、ナナの所属する BLACK STONES と恋人の本城蓮が所属する TRAPNEST、2つのバンドのメンバーたちを交え物語は進んでいく。
NANA – Wikipedia
けいおん!
タイトル | けいおん! |
作者 | かきふらい |
出版社 | 芳文社 |
レーベル | まんがタイムKRコミックス |
巻数 | 全6巻(完結) |
あらすじ
私立桜が丘女子高等学校(桜が丘高校)に入学した田井中律は一緒に入学した幼なじみの秋山澪とともに軽音部の見学に行こうとするが、部員が前年度末に全員卒業してしまったため、4月中に新入部員が4人集まらなければ廃部になると聞かされる。
その後、合唱部の見学に来るつもりが律の勧誘で軽音部に来てしまった琴吹紬は、律と澪の掛け合いを聞いているうちに2人を気に入り、入部に同意する。
3人は部の存続のため、あと1人を入部させるべく勧誘活動を開始した。
けいおん! – Wikipedia
作品のおすすめポイント
女子高生たちが放課後に過ごす、ゆるっとした軽音ライフが描かれる『けいおん!』。
驚異的なヒット作となった京アニによるアニメシリーズの原作漫画です。
この作品の魅力はやはりなんと言っても、個性的でかわいい登場人物たち。
天然ボケが服を着て歩いているような主人公の平沢唯に、元気いっぱいで活動的な田井中律、一見クールだけど恥ずかしがり屋な秋山澪、お嬢様育ちで琴吹紬。
そしてやがて後輩として入部してくる中野梓の5人を中心に、女子たちの他愛のない日常が4コマ漫画で楽しく描かれていきます。
テレビアニメ第1期が2009年、第2期が2010年と気がつけば放送からずいぶん経ってしまいましたが、作品で描かれる他愛のなさの素晴らしさは普遍的なもののように思います。
壮大なストーリーに少し疲れてしまった方、また現実の忙しさに息切れしそうな方は、ぜひ彼女たちの日常に癒されてみてはいかがでしょうか。
ハレルヤオーバードライブ!
タイトル | ハレルヤオーバードライブ! |
作者 | 高田康太郎 |
出版社 | 小学館 |
レーベル | ゲッサン少年サンデーコミックス |
巻数 | 全15巻(完結) |
あらすじ
朝桜小雨は中学卒業を機に、好きな女子のために全財産をはたいて買ったギターと自作の歌をひっさげて告白するも、彼女はバンドマンに想いを寄せており、見事にフラれてしまう。
己のカッコ悪さを省みた小雨は、バンド活動で自分を磨き、いつか見返す決意を胸に、明狼学院へと進学する。新入生の勧誘で学内が賑わう中、軽音楽部を探していた小雨は、まるで中学生ような少女空次ハルと出会う。
「音楽の魔法を信じるかい?」と問いかける彼女に導かれた先で、学内には存在しないはずの軽音楽部が「金属理化学研究部」(通称「メタりか」)の名で活動していることを知る。
ハレルヤオーバードライブ! – Wikipedia
バジーノイズ
タイトル | バジーノイズ |
作者 | むつき潤 |
出版社 | 小学館 |
レーベル | ビッグコミックス |
巻数 | 全5巻(完結) |
あらすじ
「すきなもんいっこ、あればいい」 ――そう、思っていた。
マンション管理人をしながら、趣味で音楽を奏でる「だけ」。
”シンプルで完璧”な生活を送る清澄(キヨスミ)。
しかし――清澄が出逢ってしまったのは、 バンドマンに恋をする女・潮(ウシオ)。
閉じた世界に流れ込む強烈な”ノイズ”が、 清澄の人生を大きく変えてゆく――― たったひとりと出逢うだけで、世界が変わる。
バジーノイズ | 小学館コミック
作品のおすすめポイント
『バジーノイズ』はモノづくりに携わる人、これから携わりたいと考えている人にはぜひ読んでいただきたい漫画。
また決して1巻だけで終わるのではなく、3巻以降までたどり着いてほしい作品です。
というのも、さまざまな出会いの中で変わっていく主人公がこの漫画の核であり、それゆえ前半は共感が難しいであろう部分が多々見られるからです。
自閉した世界で外部に期待することなく、誰にも邪魔されない環境で音楽を奏でられることに消極的な満足感を見出していた主人公・清澄。
それが潮に出会い、文字どおり「殻」を壊されて外に引きずり出されたことで、文字どおり世界が変わり始めます。
人と出会い、見ないようにしていた世界に触れることで少しずつエゴが表出し、音楽との関わりあい方が変わっていく——。
創作に関わったことのある方なら切実さを覚える部分ではないでしょうか。
音が生み出す心地よさを光の泡のような描写で描き、反対に動揺や混乱といった不快感をノイズのようなぐちゃぐちゃした線のかたまりで描くなど、音楽の表現のしかたもぜひ見ていただきたい部分の一つです。
僕はビートルズ
タイトル | 僕はビートルズ |
作者 | かわぐちかいじ |
出版社 | 講談社 |
レーベル | モーニングKC |
巻数 | 全10巻(完結) |
あらすじ
2010年3月11日。ビートルズのコピーバンド「ファブ・フォー」は、日本のビートルズバンドの聖地である六本木リボルバーと専属契約を結び、「本物のビートルズよりも上のテクニック」をステージで披露する日々を送っていた
ある日、メンバーの一人レイが脱退を告げ、レイを交えた4人での最後のステージを終えた。その後、マコトは六本木駅のホームでレイを引き止めようとするが、考えを変えないレイに激昂したマコトは、電車が入りつつあるホームでレイを突き飛ばし、腕を掴んだことでレイ、ショウ、マコトは三人とも落ちてゆく。
反対側のホームにいたコンタも異常に気づき、目を見開いた。次にショウとマコトが目を覚ました時、2人は1961年3月11日へとタイムスリップしていた。
僕はビートルズ – Wikipedia
作品のおすすめポイント
『空母いぶき』、『沈黙の艦隊』などで知られるかわぐちかいじ先生の作品。
「もし現代人が過去にタイムスリップした結果ビートルズが存在しなくなったら?」というSF的なモチーフが中心の作品です。
純粋な音楽マンガとはまた異なりますが、かわぐち先生の描く音楽版「歴史のif」を読みたい方はぜひチェックを!
和楽器を題材にした音楽マンガ2選
日本に伝統的に伝わる楽器を題材にした漫画も意外と多く発表されています。
ましろのおと
タイトル | ましろのおと |
作者 | 羅川真里茂 |
出版社 | 講談社 |
レーベル | 講談社コミックス月刊マガジン |
巻数 | 全31巻(完結) |
あらすじ
16歳の津軽三味線奏者の澤村雪。三味線の師であった祖父・澤村松吾郎が亡くなったことで、自分の音を探すため、単身上京する。 実質的に飛び出すような形で上京したため行くあてもない中、自身を自宅に泊めてくれた女性と、その相方のロックバンドメンバーの男との騒動に巻き込まれ、成り行きでライブハウスで津軽三味線の演奏を披露する。
その数日後、突如として来訪した母・澤村梅子に東京での下宿先を与えられるとともに、東京の学校に通うように手配される。私立梅園学園に通うことになった雪は、津軽三味線愛好会のメンバーたちとの出会いから、様々な「音」に巡り合って行く。
ましろのおと – Wikipedia
この音とまれ!
タイトル | この音とまれ! |
作者 | アミュー |
出版社 | 集英社 |
レーベル | ジャンプコミックス |
巻数 | 既刊29巻(2023年8月4日時点) |
あらすじ
本作の主人公・久遠愛は、ある年の春、神奈川県の県立高校・時瀬高校に進学し、箏曲部に入部する。当時、箏曲部の部員は部長の倉田武蔵1人しかおらず、箏曲部は廃部の危機に瀕していたが、愛に加え、箏の家元の娘・鳳月さとわや、愛の友人の足立実康・水原光太・堺通孝が入部したことで、部員不足による廃部の危機から脱する。しかし、愛のことを快く思わない教頭が箏曲部の廃部を目論んだため、部員たちは部の存続を懸けて、1か月後に全校生徒の前で演奏を披露することになる。
この音とまれ! – Wikipedia
この作品のおすすめポイント
おしとやかなイメージのある琴とバキバキのヤンキーの組み合わせが目を引く『この音とまれ!』。
喧嘩や警察沙汰といったヤンキー漫画的なノリをふんだんに織り混ぜつつも、琴という楽器の魅力をしっかり表現しようという音楽的な要素もあり、楽しみ方の幅の広い作品です。
廃部寸前となった箏曲部を不良の主人公が立て直していくという青春もの・部活ものとしても楽しめるかと思います。
『GTO』などのヤンキー系漫画のカタルシスが好きな方にはおすすめの作品です。
合唱・歌を題材にした音楽マンガ4選

意外と少ないのが歌や合唱など人の声をテーマにした漫画。
ここでは合唱を題材にしたおすすめの音楽マンガを紹介します。
はしっこアンサンブル
タイトル | はしっこアンサンブル |
作者 | 木尾士目 |
出版社 | 講談社 |
レーベル | アフタヌーンKC |
巻数 | 全8巻(完結) |
あらすじ
高校1年生の藤吉晃は声変わりで声が極端に低くなったことにコンプレックスを抱えていた。
「声を使わない仕事に就きたい」という理由で進学した工業高校で、彼は合唱部を作ろうと活動する同級生・木村仁と出会う。
藤吉は木村によりバリトンの才能を見出され、合唱部に入ろうと誘われる。
作品のおすすめポイント
はしっこアンサンブルの魅力は主人公の藤吉晃が類まれなバリトンボイスの持ち主だという意外性が一つ。
主人公といえば華やかな中音域〜高音域が相場なイメージがありますが、あえてコンプレックスに繋がりがちな低音にスポットを当てているのは着眼点として素晴らしいと感じます。
そして魅力の2つ目は個性豊かなキャラクターたち。
つい「あ、こういう子いる!」と言ってしまいたくなるような、漫画的だけれど現実感のあるキャラクターがたくさん出てくるのがこの作品の他にはない魅力でしょう。
八田くんにしてもそうですし、木尾士目先生の「十代男子たちの部室でうだうだやってそうな感」の描写力が遺憾なく発揮されていますね。
(『げんしけん』とかこういう空気感はさすがだと思います)
そして魅力の3つ目は、声楽を音楽的、科学的に解説しているところ。
パッションだけを描きがちな音楽マンガにおいて、音声工学に踏み込んだ内容は音楽経験者の方でも(方ならなおさら)十分楽しめる内容になっているのではないかと思います。
ガールクラッシュ
タイトル | ガールクラッシュ |
作者 | タヤマ碧 |
出版社 | 新潮社 |
レーベル | コミックニコラ |
巻数 | 既刊6巻(2023年8月1日時点) |
あらすじ
校内でカリスマ的な人気を集める高校1年生の百瀬天花。
歌やダンスが上手く容姿も端麗な彼女だが、小学生時代は家庭の事情から、今とは真逆の暗く孤立した日々を過ごしていた。
そんな中でも変わりなく接してくれた幼馴染の湊晴海に心を惹かれた天花は、晴海にふさわしい人になるために努力を重ね、今のカリスマ的存在感を手にする。
しかし晴海は佐藤恵理杏という地味で小柄な同級生が気になっていた。
臆面もなく「夢はK-POPアイドル」と話す恵理杏に苛立ちを覚えた天花は、彼女の実力を試そうとするが——。
作品のおすすめポイント
『ガールクラッシュ』の魅力は、恵理杏と天花という対照的な2人が絶妙なコントラストを見せながらもK-POPアイドルという夢に向かって突き進む美しい努力の姿。
恵理杏という自分の意思決定に揺らがない超絶ポジティブ女子と、一見カリスマだけれども他人からの承認で生きている天花の2人の姿には、多くの読者があこがれと現実を重ね合わせるのではないかと思います。
特に恵理杏のスクールカーストのような負のヒエラルキーを軽やかに抜け出していくかのような逡巡のなさは、ある種の理想を体現した姿でしょう。
スポ根的な要素もありつつ、繊細な内面の問題をも描く『ガールクラッシュ』。
ダンスシーンも多く描かれる本作品では圧倒的な画力も見どころの一つとなるなど、多彩な要素が織り込まれた、今一番注目したい作品です。
パリピ孔明
タイトル | パリピ孔明 |
作者 | 作画:小川亮、原作:四葉タト |
出版社 | 講談社 |
レーベル | ヤングマガジンコミックス |
巻数 | 既刊14巻(2023年8月1日時点) |
あらすじ
物語の始まりは西暦234年の中国。
蜀の軍師・諸葛亮孔明は五丈原にて病死する。
死の間際、次は命のやり取りのない平和な世界に生まれ変わりたいと願った孔明が転生したのは、ハロウィンに盛り上がる現代日本の渋谷だった。
行き交う群衆の中、仮装の若者たちに声をかけられた孔明はクラブに連れて行かれる。
大音量のダンスミュージックが流れる中で、孔明が目にしたのはステージで歌い踊る月見英子だった。
英子の歌に心を打たれた孔明は、彼女の軍師となることを申し出る。
作品のおすすめポイント
諸葛孔明が現代日本に転生するという設定の意外性のみならず、これに天下泰平を目指す場がなぜか音楽シーンという発想の奇抜さがかけ合わさったことで、類を見ない面白さが生じているのがこの作品。
クラブ界隈のチャラさと孔明のギャップが言いようのないおかしみを生み出しています。
かと思いきやクラブオーナーが三國志マニアで、2人で三國志談義に花を咲かす姿などはもう笑うしかない。。。
もちろん英子をスターダムへと押し上げていく様子を描いた成り上がり音楽漫画としても楽しめますよ。
三國志本編で出てくるネタもふんだんに取り入れられており、三國志マニアの方はなおさら楽しめる作りになっているのもうれしいところ。
少年ノート
タイトル | 少年ノート |
作者 | 鎌谷悠希 |
出版社 | 講談社 |
レーベル | モーニングコミックス |
巻数 | 全8巻(完結) |
あらすじ
音に対しての感受性が人一倍豊かな主人公・蒼井由多香。ボーイソプラノの声の持つ彼が中学校の合唱部に入り、少しずつ周りの人間に変化をもたらしていく。
Wikipedia
DJ・ヒップホップを題材にした音楽マンガ2選

クラブミュージックやヒップホップのパイオニアたちもすでにアラ還(!)
歴史ある音楽ジャンルとして、DJ・ヒップホップカルチャーを下敷きにした作品も生まれています。
とんかつDJアゲ太郎
タイトル | とんかつDJアゲ太郎 |
作者 | 原案:イービャオ、作画:小山ゆうじろう |
出版社 | 集英社 |
レーベル | ジャンプコミックス |
巻数 | 全11巻(完結) |
あらすじ
とんかつ屋の跡取り息子揚太郎がクラブカルチャーに衝撃を受け、とんかつ屋とDJに数多くの共通点を見出しながら、その両方を目指して奮闘するギャグ漫画。
Wikipedia
ライミングマン
タイトル | ライミングマン |
作者 | 若杉公徳 |
出版社 | 白泉社 |
レーベル | ヤングアニマルコミックス |
巻数 | 全4巻(完結) |
あらすじ
高校生の踏男は、かつてはシャカキングとして一世を風靡し、今ではニートなラッパーの父に幼い頃からラップについて叩きこまれていたが、すっかりラップが嫌いになっていた。学校でも東京大会3位のラッパーで上級生のMCビガーに足蹴にされ、ますますラップ嫌いになって行く。
その父が復帰公演として出演を予定していたMCバトル。父が怪我で入院し出場辞退を踏男に告げるが、その相手がMCビガーと知った踏男はフミオ a.k.a. ライミングマンとしてラップバトルの舞台に立つことになり、次第に嫌っていたラップの魅力に目覚めていく。
Wikipedia
音楽を題材にした漫画おすすめランキングまとめ
以上、音楽をテーマにおすすめ漫画をご紹介いたしました。
一口に音楽といってもジャンルや楽器、また題材も多彩。
また音のない漫画という表現媒体でどのように音を描くのかという、表現技術の妙までを楽しめる特別な漫画ジャンルではないかと思います。
ぜひお気に入りの漫画を見つけていただけると幸いです。
◇ ◆ ◇
また本ブログではジャンルごとにおすすめの漫画を紹介しています。
ぜひ下記の記事もチェックしてみてください。




